夏仕様の会場clip日本橋朝9:20。夏らしい高い空の広がる日本橋に、学生から社会人まで、28名の参加者が集まりました。こんな素敵なお天気の日に、たくさんの人が集まって、せっせとマンションコミュニティについて考える…なんてストイックなんでしょう。
本日のテーマは「都市のマンションコミュニティの課題を解決し、住民同士の豊かなコミュニティをつくるために、デザインには何が可能か?」。大きく3つの発想手法を使いながら、マンションコミュニティの課題を解決するためのアイデアを生み出します。
アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせである
『アイデアを発想する』と聞くと「難しそう…」「そう簡単には思いつかないよー」と身構えてしまいますが、実は、発想にも型があるのです!と、ファシリテーターの白木より講義が始まりました。
たとえば、カッター。昔、ガラスでモノを切っている様子を見たある人が「板チョコのようにポキポキ折れる刃があれば、いつでも切れ味が良いまま使えるのでは?」と、カッターを発明しました。ガラスで何かを切る文化も、板チョコも、既にあったものだけれど、それを組み合わせることで新しい文化を生み出す事ができました。
では、何を組み合わせれば良いのか?
これを考える際、大きく3つの発想法があると言われています。それら3つの発想法を順番に体験しながら、アイデアを発想するワークに取り組んでいきます。
FormA 現場から発想する
まず1つ目の手法は、生活者の声や生活スタイルから発想する方法です。
だれが、何に困っているのか?現場の声を聞いて、アイデアを発想します。今回は参加者が実際に聞きにいくのではなく、事務局が事前に行った5つの家族のヒアリングレポートを聞いて、疑似ヒアリングを行いました。
「入居時に挨拶に行ったけど不在だったので、それからまったく接点はないですね」
「上の人が飼ってる犬の声がうるさいときもあるけど、あそこは中年女性が一人で住んでるから、仕方ないと思っちゃう」
「エレベーターが一緒になるのは気まずいから、用もないのにポストの方へ行って逃げてしまうことがあるなあ」
など、マンション住民とのお付き合いについて、課題解決のヒントになりそうな現場の声がたくさん溢れていました。それらの声や気づきを元にアイデアを出し、チーム内で発表します。
壁に貼られた人間関係ステップアップシートは、あっという間にアイデアの書かれたたくさんの付せんで埋まった
ちょっと一休み。お楽しみ日本橋ランチ
5家族分ものレポートを聞いて少し疲れが出たところで、お待ちかねのランチタイム!
今回のプロジェクトの発起人である川路さん(サステナブルコミュニティ研究会 本プロジェクト発起人)が「日本橋の美味しいものを食べて、日本橋をもっと好きになってほしい」と、なんと、手づくりランチマップを作ってくれました!
日本橋には美味しいランチがたくさんマップの前には、すぐに人だかりが。
「どれくらいのお付き合いが丁度いいのかなあ?」「あのアイデアは面白かったね!」と、チームごとに好きなお店でわいわいランチを楽しみました。
FormB 事例から発想する
事例カードを囲んで話し合いは白熱
2つ目の手法は、他の似ている取り組みから発想する方法です。
実は、前回のワークショップの最後に『コミュニケーションを促すイベント・アプリ・ツールをひとつずつ調べてくる』という宿題が出されていたのですが、ストイックな皆さんはきちんと3つ調べて、尚かつ、みんなが知らないような面白い事例を探してきてくれました。
それらの事例に加え、30の課題解決事例が入った『事例カード集』から、今回のテーマだったらこの事例のどこを応用できそうか?とアイデアを発想して、またチーム内で発表しました。
FormC 接点から発想する
そして3つ目の手法は、モノ・サービス・場所・人などの接点から発想する方法です。
80枚ある『接点カード』から、発想します。『接点カード』には、学校・手紙・タクシーなど、日常生活に登場するモノやコトが書かれたカードです。
たとえば、
「ラジオ」→「マンションオリジナルのラジオ体操をつくろう!」
「手紙」→「新規入居者に、ようこそ!と手紙が届くと良いのでは?」
「ドア」→「イベントの時はドアを半開きにしておくと入りやすいかも」
といったアイデアが出ました。
一日おつかれさまでした!最終発表と表彰
この時点で、時刻はもう19時。朝から約9時間、ほとんど休まずマンションコミュニティについて考え尽くした一日でした。
最後は、ひとりひとつずつ考えた珠玉のアイデアを発表し、issue+design賞とサステナブルコミュニティ賞の表彰です。
みんなで出したアイデアを、最後は一人ひとりシートに落とし込みながらブラッシュアップしていく
まず、issue+design代表 筧より。
「 今日は本当に、すごくいいワークショップでした。その原因は2つあると思います。1つは、テーマがすごくよかったこと。みんなが議論しやすくて、自分ごととして考える事ができる、素晴らしいテーマだったと思います。そういった意味で、機会をいただいたサステナブルコミュニティ研究会の川路さんに、皆さん拍手をお願いします。(一同拍手)そしてもうひとつは、みなさんが積極的に参加してくれた事。お盆のこんな天気のいい日に、部屋にこもってがんばってくださった忍耐力。そこが、上手く行った原因じゃないかなと思います。 」
issue+design賞は…Aチーム!
筧「 『ご迷惑おかけしますカード』や『SEKISHO Bar』、『開閉センサー付きドア』など、バラエティに富んでいました。また、だれの抱えるどんな課題に対するアイデアなのかがはっきりしていて、かつ、その人の背中をポンと押してあげられるようなアイデアでした。 」
次に、サステナブルコミュニティ研究会 川路さんより。
「 私がマンションコミュニティの企画をするようになってから9年くらいで、小さいものから大きいものまで企画をしてきて、正直、(まあほとんど僕の考えている範囲だろうな、アイデアよりプロセスを知れたらいいなあ)と思っていたんですけど。すぐにやりたいくらい素晴らしいアイデアがたくさん出て、素人でも一日やったら出来るんだ!と思って(笑)、非常に悔しかったですね。それぞれのチームに素晴らしいアイデアがあったので、1チームに決めるのは難しかったです。 」
そんなサステナブルコミュニティ賞は…Cチーム!
川路さん「“同じ建物に住んでいるという愛着をどう生むか”に絞られていた点が、良かったなあと思います。『マンションバースデー』のアイデアは、愛着を生むために、マンションができた日を誕生日としてみんなで祝うというのが、とてもシンプルで良かったです。」
“いいデザイン”ってなんだろう?
筧の講評の中で、“いいデザイン”ってなんだろう?という話がありました。
1.「何に困っているのか」「どんな思いを持っているのか」具体的にだれのためのデザインなのかがはっきりしている
2.その人が困っていることを解決している
3.その人の気持ちが動かせる、共感を呼べる、直感的に「いいな」「たのしそう」と思える
今回のワークを通して、この3つのポイントを自分に問いかけながら、課題を解決できるデザインアイデアを生み出すのが大切なんだと、たっぷり体感出来た一日でした。
参加者の皆さま、お疲れさまでしたー!
(i+d 岡本)